がん看護師として悩んだ3つのこと|現場で感じた本音とは?

    • 患者さんや家族との距離感がわからず、どう関わればいいのか迷っている
    • 経験を重ねても「この看護は正しかったのか」と迷い続けてしまう
    • 死と向き合うつらさを誰にも言えず、一人で抱え込んでいる

    がん看護をしている看護師さんたち、このような悩みはないでしょうか?

    私自身も、がん看護に携わる中で、同じように立ち止まり、考え込むことが何度もありました。その原点は、看護学生の頃の実習体験にあります。

    看護学生の頃、いくつもの病院へ実習に行く中で、私が強く感じていたことがあります。
    それは、「どこの病院にも、がん患者さんは本当に多い」ということでした。

    そんな経験もあり、就職先を考えたとき、私はがん専門病院を選びました。

    実習先であったこと、そして県立病院で地方公務員として働けるという安定した条件に魅力を感じました。正直なところ少し安直な選択だったと思います。

    こうして私は、がん専門病院で看護師として働き始め、結果的に10年間勤めることになりました。

    働き始めてから、周囲の反応に戸惑うこともありました。

    「がん専門病院に勤めている」と話すと、「大丈夫?」「つらくないの?」と心配されることが少なくなかったのです。

    けれど私自身は、どの病院でもがん患者さんは多いという印象を持っていたため、特別な場所に来たという感覚はあまりありませんでした。

    それでも、実際に現場で働く中では、教科書や実習では想像しきれなかった悩みや葛藤に、何度も向き合うことになります。患者さんとの関わり方、感情の整理の仕方、看護師としての自分の在り方――簡単に答えが出ない問いばかりでした。

    この記事では、がん専門病院で10年間働く中で私自身が感じてきた悩みや葛藤、そしてその中で見えてきた本音の部分を綴っていきます。

    がん看護に携わったことのある看護師さんや、がん患者さんを支えるご家族にとって、「わかる」「自分だけじゃなかった」と感じてもらえるような記事になれば幸いです。

    この記事を読んだらわかること
    • がん看護師が現場で感じやすい3つの具体的な悩み
    • 悩みを抱えることは「不向き」ではなく、責任感や誠実さの表れであること
    • 自分だけではなく、多くの看護師が同じように葛藤している
    目次

    患者さんや家族との距離感に悩む

    がん看護をする中で、どうしても患者さんの「死」と向き合う瞬間があります。
    たとえ関わりが短かった患者さんであっても、ご家族が涙を流す場面に立ち会う時間は、心が締めつけられるようにつらいものです。

    看護師が泣いてはいけない?看取りの場面で迷う感情

    患そんなとき、ふと頭をよぎるのが
    「看護師が泣いてしまっていいのだろうか」という迷いです。

    涙をこらえて淡々と仕事を続けるべきなのか、それとも少し涙ぐみながら家族に寄り添うべきなのか。
    感情を出しすぎるとプロとしてどう見えるのか、逆に冷たく見えてしまわないか——その狭間で揺れることが何度もありました。

    看護師の仕事には、患者さんの情報取集という大事な仕事があります。

    生活背景や退院後の暮らし、家族構成や住環境など、さまざまなことを患者さんやご家族と話しながら関係を築いていきます。
    そうして信頼関係が深まれば深まるほど、別れが近づいたときのつらさも大きくなっていきました。

    10年も務めると、がん診断初期から終末期まで、新人の頃にお世話になった患者さんを何人も看取る、そんな状況でした。

    患者さん・家族にどこまで寄り添うべきか分からない

    患患者さんが沈黙しているとき、泣いているとき、どんな言葉をかければいいのか分からなくなることもあります。


    声をかけるべきなのか、そっとしておくべきなのか。
    ご家族が涙を流している場面では、何を伝えても軽く感じてしまうのではないかと、言葉を失ってしまうこともありました。

    がん看護では、病状や治療だけでなく、時に「死」に関わる説明や場面に立ち会うこともあります。
    中には、ご家族がショックで倒れてしまったり、吐いてしまうこともありました。


    そんなとき、寄り添う言葉が見つからず、「自分に何ができるのだろう」と悲しくなることも少なくありませんでした。

    どこまで踏み込んでいいのか分からない。
    でも、距離を取りすぎることもできない。
    この「距離感」に悩む気持ちは、がん看護に携わる多くの看護師が一度は抱えるものではないでしょうか。

    そして、家族への配慮をしているほど時間もない…家族看護をしていると先輩から呼び出されて「そんなことしてる暇ないから!」と怒られました…。

    正解のないケアに迷い続けてしまう

    がん看護には、マニュアル通りにいかない場面が数多く存在します。
    一つひとつの判断に確信が持てず、迷いながら進むことへの不安が、常につきまといます。

    ケアを提供しながらも、心のどこかで
    「この看護は本当に患者さんのためなのだろうか」
    という問いが浮かぶことがあります。

    特に、苦痛緩和や治療の選択に関わる場面では、後悔にも似た感情が残ることがあります。
    自分の看護が本当に患者さんのためになっていたのか、確信を持てないままケアを続ける精神的な負担は、大きいものです。

    この看護は本当に患者さんのため?

    ケア看護をしている中で、「この看護は本当に患者さんのためなのか」と強く葛藤した場面があります。
    がん病棟では、時に延命治療に近い医療ケアに立ち会うこともあります。

    私が現場で特につらいと感じたのは、**NPPV(非侵襲的陽圧換気)**を装着された患者さんを看る時間でした。

    私が現場で特につらいと感じたのは、NPPV(非侵襲的陽圧換気)を装着された患者さんを看る時間でした。

    NPPVとは?

    NPPVは、マスクを介して陽圧の空気を送り、呼吸を補助する医療機器です。
    気管挿管を行わずに使用できるため、身体への侵襲は少なく、酸素化を改善する効果があります。
    そのため、呼吸状態が悪化した患者さんに対して、命をつなぐ選択肢の一つとして用いられることがあります。

    一方で、意識が低下している患者さんにとっては、マスクから強制的に空気が送り続けられる状態が続きます。
    医療者の間では、その苦しさを「フルマラソンを、休むことなく走り続けているような感覚」と表現することもあります。

    NPPVを装着する時点で、すでに命の危険がすぐそこまで迫っている患者さんが多いのも事実です。
    私が関わった患者さんも、NPPVを装着してからおよそ一週間、命をつなぐことができました。

    ICUで看護をしていた私たちは、
    「本当によく頑張っている」
    「ここまで耐えていてすごい」
    そう声を掛け合いながら医療を続けていました。

    それでも、心の奥ではずっと問い続けていました。
    これは本当に、この患者さんのためになったのだろうか。

    ご家族にとっては、その一週間が、気持ちの整理をするための大切な時間だったのかもしれません。
    しかし、そこまでの医療介入が必要だったのか、私には答えが出ませんでした。

    患者さんのご家族は、患者さんが置かれている状況のつらさを、十分に理解できていないこともあります。
    「もっと頑張って」「まだできることがあるはず」と声をかける姿を見ながら、
    その言葉が悪意からではないからこそ、胸が苦しくなりました。

    医療者でさえ、その苦しさを「想像」でしか理解できない中で、
    この医療、この看護は本当に患者さんのためだったのか——
    その問いは、今でも心の中に残っています。

    経験を重ねても迷いが消えない理由

    がん看護では、患者さん一人ひとりの状況がまったく異なります。
    そのため、どれだけ経験を積んでも、迷いが完全に消えることはありません。

    同じ診断名でも、患者さんの価値観や家族背景は違う。
    前回うまくいった方法が、今回も通用するとは限らない。
    刻一刻と変わる状況の中で、その都度判断を求められます。

    この「正解がない」という特性こそが、がん看護の難しさであり、同時に深さでもあります。
    迷い続けることは、決して成長していない証拠ではなく、
    患者さん一人ひとりと真摯に向き合っているからこそ生まれる感情なのだと思います。

    死と向き合うことへの精神的なつらさ

    がん病棟では、患者さんの死に立ち会う機会が他の病棟よりも多くなります。その一つひとつに真摯に向き合うほど、心は消耗していきます。

    看取りが続いたときの心の消耗

    がん病棟では、患者さんの死に立ち会う機会が、他の病棟よりも多くなります。
    その一つひとつに真摯に向き合おうとするほど、心は少しずつ消耗していきます。

    看取りが続くときには、一晩で二人の患者さんを看取ることもあります。
    亡くなる前には、呼吸の変化や意識レベルの低下など、ある程度の予兆が見えることもあるため、
    「今夜だろうか」「私が夜勤のときだろうか」「日勤で担当している間に亡くなるのだろうか」
    そんなふうに、亡くなるタイミングを無意識に考えてしまう自分がいました。

    死の三兆候(死の三徴候)

    患者さんの死を確認する際には、「死の三兆候(死の三徴候)」と呼ばれる
    心拍停止・呼吸停止・瞳孔散大の三つを確認します。
    正式な死亡確認は医師が行いますが、医師を呼ぶ前に、看護師がこれらの兆候を確認し、報告する必要があります。

    新人の頃、この確認と報告がとてもつらい時間でした。
    「亡くなりました」と口にすることが苦しく、電話口で医師に報告を終えたあと、
    こらえていた涙が一気にあふれることもありました。

    そうした経験を重ねるうちに、少しずつ心がすり減っていく感覚がありました。

    患者さんの死亡確認後は、ご家族が悲しみに浸る間もなく、現実的な対応が始まります。

    死後硬直が始まる前に、死後処置と呼ばれる身体のケアを行い、
    葬儀会社の手配についての説明もしなければなりません。

    死後硬直

    死後硬直とは、死亡後しばらくして筋肉が硬くなる現象です。時間の経過とともに関節が動かしにくくなるため、亡くなられてから早い段階で体位を整えたり、死後処置を行う必要があります。

    死後処置

    死後処置とは、患者さんが亡くなられた後に行う身体のケアのことです。清潔を保ち、表情を整え、体液の漏れを防ぐなど、安らかな姿でご家族がお別れできるよう配慮して行われます。看護師が中心となり、尊厳を大切にしながら実施します。

    すでに葬儀会社が決まっているのか、まだであれば一覧の中から選んでもらうこと、
    料金や今後の流れについても、短時間で説明する必要があります。

    数時間後には医師の診断を受け、ご家族とともにお見送りをします。

    本当は、患者さんのこれまでをねぎらい、ご家族がゆっくりとお別れの時間を過ごせるよう寄り添いたい。
    そう思う反面、死後のケアを行いながら、同時に他の担当患者さんの看護もしなければならない現実があります。

    一つひとつの死に、十分に向き合えないと感じてしまうことが、さらに悲しさを深めることもありました。感情を置き去りにしたまま業務をこなす日々が続くと、いつの間にか心が疲弊していることに気づきます。

    つらいと感じてはいけないと思ってしまう

    看護師として働く以上、死と向き合うことはプロとしての責務だと、頭では理解しています。
    だからこそ、つらいと感じる自分を責めてしまうことがありました。

    「看護師なのに、こんなことでつらいと感じるなんて未熟だ」

    「他の人は平気そうなのに、自分だけ引きずっている」

    そんな思いが浮かび、職場では弱音を吐けず、一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。

    けれど、つらいと感じること自体は、決して悪いことではありません。
    それは、患者さん一人ひとりと真剣に向き合い、その人生や最期に心を寄せているからこそ生まれる感情なのだと思います。

    新人の頃は、看取る度に先輩がケアをしてくれます。ちゃんとメンタルケアを行うからこそ、次の看護をよりよいものにしようという気持ちにさせてくれます。

    自分の看護に自信が持てなくなる瞬間

    経験を積んでいても、ふとした瞬間に「自分はがん看護師に向いていないのではないか」という不安に襲われることがあります。

    向いていないのではと感じるとき

    命を扱う現場だからこそ、一つのミスが心に重くのしかかります。
    少しの判断の遅れや、アセスメントの甘さが、患者さんの状態や苦痛に影響してしまうかもしれない。

    そう思うと、自分の判断力や観察力に自信が持てなくなることがありました。

    患者さんの今の身体の状態や、臓器の状況を正しく捉えられなかったとき、
    結果として、最善とは言えない看護を提供してしまったのではないかと感じる瞬間があります。

    日々の業務の中では、こんな思いを抱くこともあります。

    • ミスをしたとき、「自分にはこの仕事は無理なのでは」と思ってしまう
    • 周囲の看護師と比べて、自分の対応が劣っているように感じる
    • 患者さんやご家族から感謝の言葉をもらっても、素直に受け取れない

    一つの出来事が、看護師としての自分全体を否定しているように感じられてしまう。
    完璧でいなければならないという思いが強いほど、こうした不安は大きくなっていきました。

    それでも多くの看護師が同じように悩んでいる

    こうした悩みを抱えているのは、決して自分だけではありません。
    周囲では平然と仕事をこなしているように見える看護師たちも、心の中では同じような葛藤を抱えていることが少なくありません。

    悩むこと=不向き、というわけではないと思います。
    むしろそれは、責任感が強く、患者さん一人ひとりに真剣に向き合っているからこそ生まれる感情です。

    私自身、看護師として働いたあとに、ライターなど他の仕事も経験しました。

    その中で改めて感じたのは、看護師という仕事が、いかに責任が重く、強いプレッシャーのかかる仕事だったかということです。

    一つの判断が、誰かの命や生活に直結する。
    そんな仕事を日常的に担っているからこそ、「向いていないのでは」と感じてしまうほど、自分に厳しくなってしまうのだと思います。

    悩みを抱えること自体が、患者さんを大切に思い、より良い看護を提供したいという気持ちの表れです。
    完璧な看護師は存在せず、誰もが迷い、立ち止まりながら、それでも前に進んでいます。

    まとめ:がん看護師の悩みは「特別」ではない

    がん看護は、決して楽な仕事ではありません。

    それでも、これらの悩みが生まれるのは、患者さん一人ひとりと真剣に向き合い、「少しでもその人のためになる看護をしたい」と願っているからこそだと思います。

    悩むことは、弱さではなく、責任感や思いやりの裏返しです。

    がん看護には、確かに心がすり減る瞬間があります。
    それでも、患者さんやご家族と向き合い、人生の大切な時間に寄り添えるという点で、
    他には代えがたいやりがいを感じられる仕事でもあります。

    看護師という仕事は、命と向き合い、人の人生に深く関わる、尊い仕事です。
    迷いながらでも、立ち止まりながらでも、誰かのそばにい続けようとする姿勢そのものが、看護師の価値なのだと思います。

    もし今、悩みの中にいるなら、無理に答えを出そうとしなくて大丈夫です。
    悩みながら続けていくことも、看護の一部です。
    自分なりのペースで向き合い続ける中で、きっとまた「この仕事をしていてよかった」と思える瞬間が訪れるはずです。

    いろんな思いを経ながらも私は看護師の仕事が大好きです。こんなにやりがいを感じられる仕事は他にないと思っています。

    そんな私がおすすめする看護師のなり方・仕事内容は下記の記事で紹介しています。
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    ご家族ががん患者で悩んでいる方、ご家族を看取って看護師という仕事になにか感じることができた方にはぜひ挑戦してほしい仕事です。

    ご家族ががんと向き合う姿をそばで見てきた方や、大切な人を看取る経験を通して、看護師という仕事に何か心に残るものがあった方にとって、がん看護はその思いを形にできる仕事かもしれません。決して簡単ではありませんが、誰かの人生に寄り添える、意味のある仕事だと思います。

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